矢沢さんは数々の美しい作品を創る漆の作家であり、美の蒐集家でもある。彼が“もの”に出会う場面に何度か居合わせたことがあるが、近寄り難い雰囲気で声をかけるのもためらわれる。対象物の前に立ち、一言も発さず厳しい顔で“もの”との間に生ずる化学反応を確かめている。しかしそれは決して対象物の細部の欠点をほじくりかえす目ではなく、そのものが持つ精神や力を推し計っている風にも見える。それらは時には現代作家の絵画であり、アフリカの布であり、また時代を経た木彫であったりするが、すべてに共通するものがあるように思う。矢沢さんの漆を見る時、伝琉的な工芸の世界にありながら、言葉におきかえられない、なにかもっとザクリとした本質的な気配を感じるがそれは“もの”を選ぶという行為を通しておのずと、身体の中から生れてきた矢沢さんの美のかたち、美の精神というものなのだという気がする。ご高覧いただければ幸いです。


壁面にアフリカの草ビロードを展示いたします。併せてご覧ください。