一年前、山梨の榛場さんを訪ねた。 何か出来ていたら一つ二つ見てみたいと言うと、まだスケッチだけれどもと、アトリエに案内してくれた。描きかけの画布や作りかけの作品があると思いきや、榛場さんの指さしたのは、窓ガラスにひょいと止めつけたチョコレートの内箱の裏側、机の上にころがっている折れた釘のようなものなどだった。 これらを榛場さんはスケッチと呼び、日々眺めながらそこから、立ち上がってくるなにかを待っているようだった。 身辺にころがっているさもないものに美を思う心は、私を含め日本人の美意識の中に受けつがれきていると思うが、その美の正体を見極めたいと、向き合い続ける榛場さんをすごいと思った。 追っても追ってもつかみきることのできない”なにか”、そのことを榛場さんは百も承知の上で一歩でも二歩でも近づき、その幽玄のかなたにあるものを、作品の中に引き寄せたいと思っているのかも知れない。前回出品された蠢く生命の胎動や、張りつめた時間を感じさせる作品、また夢の中のもどかしくも儚げな気配を思わせる作品たちは、こんな中から生まれてきたのだと合点がいく思いだった。今回の展覧会で、また新しい”なにか”に出会えるのを心から楽しみにしている。