物語りのおくへ

榛葉 莟子展

SHINBA SHOKO
2002年7月1日(月)−11日(木)

AM11:00−PM7:00(日曜休廊)


20数年前、ある工芸誌に心にかかる一頁がありました。布といえば布、しかしオブジェにも見えるその作品は、美しくもあり醜くもあるどきりとするような存在そのものの力強さで、いつのまにか心の隅っこに住みついていました。3年前偶然訪ねた工房の片隅に一体のオブジェを見た時、作者の名も知らぬまま忘れていたあの時の印象がありありと甦り、胸が高鳴りました。
榛葉SHOKOさん、いつも心の奥底をのぞき込み向き合うことによって、偽りのない自分自身を表現しようとしている作家です。
その分身とも思える作品は常に圧倒的な存在感をもって見る人の心に迫ります。「とことん自分を追いつめ、とことん悩んだら明るいものが見えてきた」と言う榛葉さんの今回の作品は長い闇をくぐり抜け、光へと昇華していく自身の精神世界なのかもしれません。かつての闇の中でうごめく根元的な存在を感じさせる作品も、近年の暖かくなにかを内包するような作品や、光へ向って飛翔するように見える作品も、榛葉さんが生み出すかたちは、抽象的な表現の中に常に原初の物語を秘めて私たちに語りかけてくれるのです。
たった一葉の写真で見ただけの榛葉さんの作品が、私の中に種を落とし、いつの間にか根付いていた。人と作品との出会いの不思議を感じると共に今回の作品展を開くことができましたこと、不思議な縁と嬉しく思えてなりません。